リンダーホフから約1時間30分くらいでミュンヘン市内に到着し、予約してあったコスモポリタンホテルにチェックインした。かつてミュンヘンのモンマルトルと呼ばれていたシュヴァービングにある小さなシテイホテルで、地下駐車場完備なので便利である。さっそくミュンヘンに住んでいる友人に連絡し、本日の夕食は日本食に決定した。 ホフブロイハウスの近くにある庄屋レストラン
(電話:292772 住所:Orlandostr.5 )にいくことにしたが、金曜日の夜ということもあり、地元のドイツ人達でお店は満席だった。困っていた僕達にお店の責任者風女性が庄屋本店のお店を紹介してくれた。しかも“タクシー代はお店持ち!”というサービスまで受けてしまった。これには感激!
本店では、お寿司や揚げ物といった純日本食を注文し、日本酒を飲んでけっこう散財してしまった。昨夜の古城ホテル&ドイツ料理も最高だが、やはり連日連夜というのはちょっと・・・。つくずく、日本人の舌は飽きっぽいのだと思った。 8月12日、8時30分起床。ホテルで軽く朝食をとった後、ミュンヘン市内を散策することにした。マリエン広場にはドイツ最大の仕掛け時計で有名なネオゴシック建築の新市庁舎が立っている。また、タマネギ頭の二つの塔を持つフラウエン教会はミュンヘンのシンボルだ。歴史的にみると、ミュンヘンの名前の由来は遠く10世紀の昔、この近郊にあったベネディクト派の僧院の「僧侶(メンヒエMoencheまたはミュニヘンMunichen)の村」から起こったといわれる。
僕達にとってミュンヘンといえば、もちろんビール&白ソーセージである! 日本人の8倍は軽〜く飲むといわれる程ドイツ人のビール好きは有名であるが、その最たる場所はミュンヘンであろう。世界一のビール祭りオクトーバーフェストがその典型だ。
今回は創業1363年のバイエルン料理の老舗“Zum
Franziskaner”を訪れた。本日2回目の朝食である。専用の甘辛いマスタード(ミュンヘン子御用達は何と言ってもヘンデルマイヤーズのマスタードだそうだ!)で食べる白ソーセージとブリッツェル(8の字型の粗塩をまぶしたパン)、それにヴァイス・ビール(麦芽香味が強く、苦味はやや少ないビール)はまさにイメージ通りのミュンヘンの味で大満足だった。
ここで少しビールの種類とその製法をドイツ・ビール大辞典から抜粋してみよう。 ワインやウイスキーなどのアルコール飲料と同じように、ビールにも多くの種類がある。ビールを分類するには、原料、色、産地など様々な方法があるが、ここでは最も普及している上面発酵と下面発酵の2種類の製造法を紹介する。
●上面発酵とは、発酵中に酵母が液面に浮き上がるところから名付けられた製造法。歴史的にみればほとんどのビールがこの製法で作られている。香気が華やかなのが特徴だが発酵温度が15〜25度と高くなるため、初期には酸敗しやすいという難点があった。
代表的なビールはケルンで作られる黄金色のケルシュ・ビールと、 苦味が強く、アルコール度も高い黒ビールのビター・スタウト(ギネスが代表銘柄)である。
●下面発酵は、15世紀に偶然に誕生した製造法で、比較的低い温度で発酵され、発酵の終わりには酵母が沈む製造法。低温のために空気中から微生物の混入が少なく、日持ちも良いことから徐々にヨーロッパ大陸に広まった。氓X世紀半ばにはシステマティックな技術が定着し、今や世界のビールの大部分はこの製造法によって作られている。この製造方法で作られるビールはラガービールといわれることが多い。(「貯蔵」という意味のドイツ語Lagerに由来する)
代表的なビールに、チェコスロバキアのピルゼンが発祥地とされるホップの効いた淡い黄金色のピルスナー・ビールがある。すっきりした味わいが好評を博しており、日本を始め世界のビールの大部分がこのタイプ(略称ピルス)である。北ドイツのハノーバー市に属するアインベックという町で13世紀前半に誕生した濃褐色の強いボック・ビールも下面発酵によってつくられる。「雄山羊」という意味のドイツ語Bockからラベルに大きな角の山羊が描かれたものが多い。
そして下面発酵誕生の地、ミュンヘンで作られる由緒正しいビールがミュンヘン・ビールである。エキス分が多いため麦芽香味が強く、苦味はやや少ない。
以上のビールはすべて大麦からつくられるものだが、バイエルン州名産ビールのひとつに小麦を原料とするヴァイツエン・ビールがある。
酵母が瓶の中でさらに発酵を続けている為に白濁しており、炭酸が多くホップ特有の苦味が少なく、程よい酸味がある大変個性的なビールであるであるが、飲み慣れるとかなり病みつきになる。在独日本人にもこのビールのファンは多い。
ビールにもいろんな種類があり、味わいも製法も多様であることが、みなさんにも理解していただけたであろう。 さて、本日2回目の朝食を終え、次の目的地である普通の観光ガイドには載っていない街フライジングへ。ミュンヘン市内から約30km北上した所にあるこの街には、現存するビール醸造所では最古といわれる「ヴァイヘン・シュテファン」がある。
土曜日の昼下がり、屋外のビアホールは僕達のような観光客と地元の人々で賑わっていた。若いウェイターの中には、ここでビールマイスターを目指して勉強している学生もいて知識が豊富で好感がもてた。
ヴァイヘン・シュテファン醸造所が発行しているカタログによると、この醸造所は、11世紀初頭にベネデイクト派によって建てられたヴァイヘン・シュテファン修道院の中につくられたもので、1142年にはビール醸造権に加えて修道院ビールとして始めて販売権を得ていた。当時、ドイツ各地の修道院ではそれぞれの領地で良質の大麦を栽培してビールづくりを行っていた。修道院の僧侶達はビール酵母の取扱いにも熟知していて、当時としては最高品質のビールを生産していた。
また、修道院では慈善の一環として、貧者や旅人にもビールをふるまった事からキリスト教の普及とともにビールは民衆の生活に浸透していった。 ところが、14世紀以降このヴァイヘン・シュテファンは他の多くの修道院と同じように地域勃興による地域ビール醸造所に押されて力を失っていった。それに加え、宗教戦争や火災などによって幾度も存続の危機にさらされた。そして遂に1805年、ナポレオン進入とともにヴァイヘン・シュテファン修道院は活動停止を余儀なくされ、ビール醸造所としてのみ生き残る事になったのである。
以後現在に至るまで、バイエルン州立の醸造所としてビール生産を続けている。ここで現在つくられているビールは約12種類で、ピルスやエキスポートなどのラガービールとヴァイツエン・ビール、さらに5月と12月には濃度の高いフェスト(祭り)ビールを生産している。また1865年には、修道院の近くに科学を取り入れた近代的なビールづくりの専門学校が設立され、その後約120年の歳月を経て、現在はミュンヘン工科大学ビール醸造学科となって世界中のビールマイスターを養成しているのである。 今回は、残念ながら工場見学は出来なかったが、ヴァイヘン・シュテファン醸造所のホームページに見学申込みのフォームがあるので、興味のある方は事前に予約してから訪れると良いだろう。
いやあ〜、今日は朝からビール三昧で、ヴァイヘン・シュテファン醸造所のテラスにある木陰で、すっかり僕達はデキアガッてしまった。のどかな南ドイツの雰囲気にすっかり馴染んでしまい、動くのが億劫になっていたが、次なる目的地ニュールンベルクへと車を走らせた! |