メクレンブルク・フォアポンメルン州の州都シュヴェリーンは、水と緑に囲まれた美しい古都。 ハンブルクとベルリンの間に位置する。 町のシンボル、シュヴェリーン城とその庭園、いくつもの湖や池が連なった特殊な立地が、この町にのどかでロマンチックな雰囲気を漂わせる。  1160年、ザクセン大公ハンリッヒ獅子公がシュヴェリーンに自治権を与えたが、その200年ほど前にも、すでに現在の城の場所にスラブ人の城があったといわれている。 東西ドイツ統一後は町の整備もすすみ、大型ショッピングセンターもできて近隣から観光客を集めている。 メクレンブルク文化の中心地として栄えてきた都市だけに、州立劇場をはじめ、コンサートなどの文化プログラムも充実している。 町の観光は徒歩で充分だ。 まずはシュヴェリーン城の手前、湖の隣の駐車場に車を置いてしまおう。 ここが満車でも、中心地にも駐車場はいくつもある。 なんといっても2つの湖の間にまたがるようにそびえる優雅な城、シュヴェリーン城がこの町の観光の目玉。 北ドイツではこのような豪華な城は珍しい。 16〜17世紀にネオ・ルネッサンス式を基調に建立され、その後19世紀中ごろに改築されて今日の姿になった。 現在は州議会として使われており、博物館として一部が一般公開されている。 駐車場から城に向かうと、突き当たりは州議会入口、ここを右に行けば博物館入口(入場料 大人4ユーロ)。 豪華な調度品で飾られた王座の間、喫煙室、歴代城主の肖像画が並ぶギャラリーなどはもちろん、時おり窓から見える庭園や湖の美しさは絵のようだ。 1階のマイセン陶器コレクションの展示も必見。 見学に疲れたら城内のカフェで休憩することもできる。 内部の見学後は、庭園や湖畔の散策をのんびり楽しもう。 * ペーターメンヒェン(小人のペーター) シュヴェリーン城には城に住み着いた守り神、ペーターメンヒェンの伝説が伝わる。 長い歴史の中では幾度もの城主の交替劇があったが、この善良な小人はいかなる時代も忠実に城の番をし、城主を守ってきた。 中世の紳士のいでたちだがどことなく愛嬌のあるペーターメンヒェン、めったに姿は見せないそうだが、“特別な機会”にだけはきっと現れるとか。   さて、次は町の中心へ。 城からも見える大聖堂の塔を目指せば、マルクト広場まで徒歩5分ほどだ。 マルクト広場には市庁舎、大聖堂が建ち、観光案内所もここ。 広場でひときわ目をひくカフェは歴史的建造物だ。  大聖堂Domは12世紀から建立が始まり、1426年に完成した。 長さ105m、内部の高さは29mに及ぶ。 ロマネスクとゴシックが混ざった様式で、現在はプロテスタントのルーテル教会となっている。 1892年には117.5mの高さの塔が完成した。 オルガンは1871年に奉献されたもの。 美しいステンドグラス、青銅製洗礼盤(14世紀初)、磔刑のキリストが描かれた祭壇(19世紀中頃)、十字架を背負うキリストが浮き彫りにされた双翼祭壇(1430年頃)などを見学しよう。 大聖堂付の聖歌隊、夏のオルガンコンサートは有名だ。 脚に自信のある向きは、ぜひ塔に登られたい(大聖堂正面入口で、料金1ユーロを支払う)。 エレベーターはもちろん無く、人ひとりやっと通れる螺旋階段はかなりきつい(総数218段)が、塔の上から一望できる湖と森に囲まれた町の景色は一見の価値あり。

 マルクト広場周辺は歩行者天国の商店街となっており、町の住民も観光客もそぞろ歩きを楽しんでいる。 小さな路地をのぞくと、11〜12世紀の建物もところどころ残っている。 大聖堂から北にぶらぶら歩くと、噴水が目に爽やかなファッフェン池Pfaffenteichに突き当たる。  ビールやワインを一杯、甘党ならコーヒーにケーキ、食事もできる気楽なカフェは中心街にたくさんある。 中心街の西には大規模ショッピングセンター、シュロースパークセンターSchlosspark-Centerがあり、この中にもレストランやカフェが多数ある。 120店以上のテナントの品揃えは西側とまったく変わらない。 土曜日も毎週18時まで開いているのが嬉しい。  お城通りSchlossstrasseとプーシキン通りPuschkinstrasseの角のカフェ・プラークCafe・Pragは、シュヴェリーン最古の由緒正しいカフェ・レストランだ。 1755年に、この場所でクレフト家がケーキ屋つきカフェを開店した。 バロック式木組み建築の当時の建物は、残念ながら1908年に焼失してしまったが、現在の建物も美しく、いつもにぎわっているのは昔も今も変わらない。 壁にかけられたクレフト家の写真のそばには、古い壁画が残る。 店内は天井が高く、あちこちにグリーンが置かれて感じがよい。 ショーケースには様々なケーキが並び、喫茶だけでなく食事もできる。 店の前のテラス席からは、シュヴェリーン城が望める。 感じの良いレストランを探すのももちろん楽しいが、シュヴェリーンでは食料持参をすすめる。 湖畔のベンチで広げるお弁当の味は格別(ゴミはきちんと持ち帰ろう)。 さらに時間があれば、湖の遊覧船に乗るのもよいだろう。 城の横が乗船場になっている。  古都シュヴェリーンは見学スポットが多いだけでなく、水と緑に囲まれてのんびりとリラックスもでき、近郊エクスカーションの目的地として最適な町だ。 これからの季節、晴れた週末には是非おすすめしたい。

アクセス:ハンブルクから約115Km。 A24をベルリン方面へ向かい、11番出口でSchwerinの道路標識のとおりにB321に入る。 町に着いたらZentrum(中央)の標識をたどると、前方に湖と城が見える。 A24は途中工事のため車線が制限されており、またB321は道路の舗装が傷んでいることもあり、所要時間は約1時間半。 シュヴェリーンに近づくと、見事な菜の花畑が左右に広がる。 5月現在ほぼ満開となっており、地平線まで続く黄色い野原の景色は圧巻。 窓を開ければ、菜の花の懐かしい匂いがむせかえるほどに漂う。 次の週末、朝起きて天気が良ければ、あなたもシュヴェリーンへ急げ!!

シュヴェリーンの市街地図

公式シュヴェリーン市サイト 

ネオルネッサンス様式の素敵なシュヴェリーン城
マルクト広場から望む雄大な大聖堂
美しいステンドグラスの大聖堂の内部
大聖堂の塔から素晴しい街が展望出来る
シュヴェリーン城の守り神ペーターメンヒェン。
ペーターメンヒェン役は街の公式ガイドさん
マルクト広場
目抜き通り
市内観光周遊バス:所要時間約1時間、1日5便、大人6ユーロ、14歳以下3ユーロ、乗り場はマルクト広場
カフェ・プラークには美味しいケーキが沢山揃っています
湖畔で過ごす優雅なひととき
見事な菜の花畑が左右に広がる、圧巻!