ハンブルクの北160kmほどに位置する北海に直結した小さな町フーズムは、かつては船舶製造用木材の積み出し港として利用され、14世紀中頃から急速に栄え発展した街である。また3月の半ば頃になると春を告げる花、クロッカスの名所でもある。 このような大規模で自然のまま群生しているのは、ヨーロッパ中でもフーズムだけ。 普段は静かな田舎町も花のシーズン中は屋台が並び、近郊からの観光客でにぎわい、満開のころには毎年クロッカス祭りが開催されている。 

城の庭園には紫色のクロッカスが一面に咲き、人も犬も思い思いに散歩を楽しんでいる風景がとても心を和ませてくれる。このクロッカスの歴史は遠く15世紀に遡る。
現在の庭園の場所に、当時は修道院があった。 パエリヤやブイヤベースに欠かせない香辛料サフランは、クロッカスの一種の花の雌しべで、今なお高価だが、貴重なこのサフランを採ろうと、修道僧たちがクロッカスを植えたそうだ。 サフランはこの種類のクロッカスからは採れないとは知らず、せっかく植えたのに結局無駄だったわけだが、おかげで今日、私たちが春の訪れを満喫できる
ことになったのである。
フーズムはクロッカスとともに、日本では「みずうみ」で特に知られる小説家テオドア・シュトルムTheodor Storm(1817-1888)の生地として有名である。
 港の近くに残る彼が住んだ家は、現在はシュトルム博物館として公開され、直筆や当時の書斎などを見ることができる。
フーズム名物は小海老のスクランブルエッグ添えHusumer Krabben mit Rueherei。このフーズム海老はうっすらと茶色がかった小海老で身がしまっていて北海の香りが凝縮された味わいは絶品である。シュレスビッヒ・ホルシュタイン産のピルスビールであるエーファー(Jever-Pils)とのコンビネーションは抜群! 
漁港のガヤガヤした雰囲気あふれる居酒屋や目抜き通り周辺にある気楽なレストランで味わうと旅の開放感が満喫出来る。 
散歩に疲れたら、町の中心から徒歩5分ほどの煉瓦造りの瀟洒な5ツ星ホテル、アルテス・ギムナジウムのカフェでのんびりするのがおすすめ。 ホテルの建物はその名の通り、1867年に建てられた旧ギムナジウムである。 感じのいいサンルーム風のカフェテリアでは、様々なケーキが楽しめる。

柔らかい春の陽光に照らされた可憐なクロッカスを眺めながら、北海の小さな港町フーズムでシュトルムの生涯に思いを馳せてみるのも良いものだ。

フーズムへのアクセス:
A23をひたすら北上、途中Nord-Ostsee Kanalにかかる橋で車を止め行き交う船を眺め、ハンブルクからは2時間弱(A23には途中トイレは数箇所にありますが、ガソリンスタンドは一軒もないので要注意!)のドライブです。 町に着いたらZentrum(セントラル)方面に進み、Schloss(城)の標識をたどれば迷うことはありません。

フーズム観光局

フーズム文化センター

フーズムの紋章
クロッカスの花が一面に咲き乱れている
可憐なクロッカス
市街地マルクト
小説家テオドア・シュトルムと彼の博物館
ハンブルクからのアクセス
ホテル・アルテス-ギムナジウム